

聖フランチェスコの粋な計らい
聖母マリアのヒーラー・ポータル・第1章)
2019年のヨーロッパ旅行の当初の主たる目的は、マルタ島で行われるジョー・ディズペンザの「上級ワークショップ」に参加することでした。当初は、これに加えてイタリアを色々探索してみようみたいな軽いスタンスがあり、ちょっとおしゃれ気分で、ヴェニスやフィレンツェとかも考えていました。別記しましたように、直前になってマグダラのマリアの軌跡を辿って南フランスへも行くことにしたのと、ちょうどヴェニスでは洪水の被害があった頃でもあり、結局、ヴェニスとフィレンツェは断念したのでした。
さて、マルタ島では、時差ボケと戦いながらジョー・ディスペンザの鬼のようなカリキュラムをなんとかこなしました。朝3時起きで足先の感覚がなくなるような寒さの中、何時間もみんなでいろんな特殊な瞑想をしたり、早朝にジョーの録音音源を聴きながら海岸を歩行瞑想したり、ホテルの屋上にある鉄筋のジャングルジムの天辺にある椅子(ストール)に立たされたり(自分の殻を破る的なエクササイズ)など、結構いろいろな意味で試練でした。
そんな僕にアメリカにいる鋭い霊能力を持ったスピ友のナタリアからメールが来ました(プライバシーの都合で仮名にしています)。
「マルタ島はどう?ところで、あなたが今回ヨーロッパにやってくることになったのは、そのワークショップが真の目的でないのはわかってる?そのワークショップはただの『おとり』で、イェシュアと聖母マリアは、あなたにヨーロッパにあるヒーラーのポータルを訪れてイニシエーションを受け取るように仕向けているのよ。結論から言うわ。フランスのルルドに行きなさい。ルルドのロザリオ大聖堂に行って、最低2時間、目を瞑ってなさい。そうすれば、あとはイェシュアと聖母マリアが全部やってくれるから。」
困りました。ヴェニスとフィレンツェを除外して、アッシジや南フランスを加えた時点で、色々な予約の変更とかで結構余分にお金がかかったんですよ。それなのに、さらに変更して、旅程にルルドを加えなさい、って言われてもー。もっと早く言ってちゃぶ台〜っ、て感じでした。
ナタリアの霊能力というか、多次元的存在とコミュニケートする力は本物で、それまで何度も助けてもらっていたので、こうやってはっきり明言されてしまうと、もう変更する以外の選択肢がないんですよね。仕方がないので、ローマとアッシジに滞在する日数をそれぞれ1日ずつ削って、最後に(つまり、サント・バームでマグダラのマリアの軌跡を辿ったあと)ルルドで二泊できるようにさらに旅程を大幅に変更しました。お金が飛ぶ〜!
そんなこんなで一週間のワークショップが終わり(確かに、特に何を得たとも感じられず、まさに「おとり」)、小さな飛行機でローマに飛び、そこで(別記のように)数日歩きまわったのち、特急みたいな電車でアッシジへ向かいました。たしか2時間ぐらいだったと思います。この頃には、例のインフルエンザ様症状はほぼピークで頭がぼーっとしていて全身がだるくて、あまり細かいところは記憶に残っていないんですが、だんだん山間になってきて、アッシジの駅が近づくと、要塞みたいなアッシジの街が山の頂に見えたのはなんとなく憶えています。
アッシジでは、窓を開けると目の前にフランチェスコ大聖堂が見える元修道院のホテルに泊まりました。11月末でしたので、オフシーズンなんでしょうね。石畳の街に人はまばらで、観光で成り立っている街なのか、観光バスとかがあまりやってこないオフピークには、街自体が冬眠しているかのように閑散としているんですね。閉まっている店もたくさんありました。チェックインを終えて、まずは、目の前にデーンと佇むフランチェスコ大聖堂を訪れることにしました。正直僕的には、聖フランチェスコに、ローマの聖パオロの時のような、感動的な再会をさせてくれることを期待していました。しかし、いろいろ歩き回っても特に感じるものもなく、地下にある聖フランチェスコの遺骨が埋葬された祭壇みたいなところに行って座って目を瞑ってみても、何にもエネルギーが来ないので、ちょっと戸惑い始めました。「招かれざる客」みたいなネガティブな感じは受けないんですが、なんか聖フランチェスコが意図的に距離を置いて遠慮しているのがはっきりとわかりました。アッシジで3泊する予定なのに、なんでそんなに冷たいの?
なんか煮え切らない気持ちで大聖堂を出て、アッシジの閑散とした物寂しい石畳の街をぶらぶら歩き始めた頃、「あ、そうだ、山頂のカルチェリの庵を訪れてみよう!」と思い立ちました。カルチェリの庵は、聖フランチェスコが街の喧騒を離れて瞑想するのに用いた山頂の別邸みたいなところです。もしかしたら、そこに行けば、聖フランチェスコが「待ってたよ!」って話しかけてくれるかもしれない。思い立ったが吉日と、あらかじめ印刷しておいた地図を頼りに歩き始めました。
最初は車通りが結構ある大きな道路沿いで、そこから細い道に入り閑静な住宅街となり、そして山の麓に向かうほどに家などが疎になっていきました。やがて、完全な山道となり、そして、もうここからは車が入れないみたいな獣道となりました。鬱蒼としげる木々の間を風の不気味な囁きが追いかけてきて、「あなたの知らない世界」っぽくなり、正直、ちょっと身も心も肌寒くなってきました。幸い、熱で頭ボーッとしていたので、逆に助かりました。余計なことを怖がったりしてる余裕がないんですよ。とにかく、前に歩くだけ。
また、いつものように、中島みゆきさんの「India Goose」を口ずさみながら、ただ一歩、また一歩と前に進み続けました。この歌は、僕の中でもうすっかり、この旅のテーマソングになってしまいました。
そんな虚な意識の中、色々な思考がランダムに頭の中で渦を巻きます。「あ、そういえば、昔ナタリアが、『聖母マリアからヒーラーとしてのイニシエーションをもらうポータルはヨーロッパに二ヶ所ある』って言ってたよね。一つが、この旅の最後に僕が行くことになったルルドのロザリオ大聖堂で、もう一つがスペインのモンセラートにあるサンタ・コヴァ。あれ、もしかして、イェシュアと聖母マリアは、僕にモンセラートにも行けって仕向けているのかな?な〜んちゃって。ルルドに行くために、いろいろ変更してお金かかったばかりだし、無理だよね〜!」
誰と会話するでもなく、ブツブツそんな戯言を呟きながら歩き続けていると、やがて目前がフッと開けてきて、「ここから尾根沿いに小径をちょっと行ったら、そこがカルチェリの庵だよ〜ん」みたいな地点に到着しました。
しかし、でも、どう見ても、入り口の鉄の扉が閉まっていて、鎖もかかっています。
「えっ?今日は開いてないの?休館日みたいのあんの?えっ?聞いてないんだけど〜!」
ただでさえ身体がしんどいのに、大きな落胆がコンクリートの塊のように降ってきて、その場にヘナヘナと倒れ込んでしまいました。
「嘘でしょ〜。ここまできたのに。」
どのくらいそこに佇んでいたか憶えていませんが、やがて鬱蒼とした木々に囲まれ昼間なのに真っ暗な空間に一人でいることに改めて気がつき、ふと怖くなってきました。もう下山するしかないので、膝を払って立ち上がり、閉ざされた門に一礼をして、引き返しました。
そんなこんなで、獣道を転がるように下り、山道から住宅街になんとか戻った頃には、曇天から土砂降りの雨になっていました。アッシジに戻った頃には、もう全身ずぶ濡れで、足先が冷たく痺れて感覚がなくなってました。雨で濡れた石畳に、冬枯れの街灯が無機的な銀色に反射し、つくづく「身も世もない」というのはこういう状態をいうのだなと感じました。行く前に開いていたはずの幾つかの店はほとんど全てが閉まっていて、ボロボロの体調と寒さと空腹と人恋しさで、もう壊れてしまいそうでした。とりあえず、閉店間近の酒屋でポテトチップとチョコレートと飲み物を買って、自分の部屋に戻りました。
服を着替え、今後のことを考えようかと、ラップトップと携帯を充電すべく、壁のコンセントを探しました。しかし、見つかったものの、これがまた、ローマでも見たことのないような古い形状のコンセントで、戸惑いました。僕が持っていたトラベル用万能アダプターをどうやって駆使しても、差し込めないんですよ。
「なんなん、これ?」
何もかもがうまくいかないアッシジでのその日の全てに嫌気が差して、その場で床に座り込んでちょっと呆然としてしまいました。電気を消して窓を開け、ほのかに照らされた大聖堂を眺めながら、しばらく途方に暮れてました。
しかし、その次の瞬間、僕にメッセージがおりてきました。話しかけられた、というわけではなく、考えの種がポツーンと水面に落とされて、そこから芽が出て何かが育つみたいな感じです(僕はclaircognizantなので)。
「聖フランチェスコ、わかったよ。そういうことなんだね。『アッシジはいいから、モンセラートに行け!』って言っているんだね。だから、君はわざと距離を置いてくれてたんだ。ありがとね。大丈夫だよ。ここアッシジでの滞在を2泊削って、フランスのルルドの後に、スペインのモンセラートを加えるよ!」
翌朝、携帯で「返金は不要です」みたいな文をイタリア語に翻訳して、英語が話せない修道女の服装のおばさんに見せて、朝一番にホテルをチェックアウトしました。ローマに戻り、そしてバチカンの同じホテルに再度チェックインして、ルルドの後に、更にモンセラートを旅程の最後に加えるべく、さらに変更の手続きをしました。(お金がさらに飛びました)。この時、体はもうボロボロでほぼ限界に来ていました。ベッドに横になっても、それでもダルいんですよ、どうしようもなく。
と言うことで、次回にはルルド、その次にはモンセラートでの巡礼の旅について書かせていただきます(つまり、これを含めて「3部構成」みたいな感じになります)。















